www.nytimes.com 参照先:ニューヨークタイムズ
ビル・マレーのお話
土砂降りになって、(撮影を)中断しなければならなかったんだ。
そしたらビルが(警察官の制服を着たままの)アダムとクロエをパトカーに乗せたまま車に乗ってどっか行っちゃったんだ。
一時間ぐらいかな。
誰にも言わないでパトカーに乗っている3人。
パトカー内でビルとアダムはこんな会話をした。
携帯持ってるか?
いえ
金はあるか?
持ってない
ガソリンもあまりないな
携帯も所持金も無く、監督やスタッフにも黙って撮影の場所を離れてしまうなんて、ビルって大胆な人ですね。
みたいな感じで言って来たんだよ
ぼくら地図も持ってなくてさ、ディズニーワールドにあるような絵付きの観光地図が一枚あるだけで…
ビルが「ここの農産物直売所覚えてる気がする」みたいなことを言い出したんだ。
だから行ったよ。
ビルはライトを付けて、まるで警察官のように出て行ったんだ。
きっと私たち捕まっちゃうわよ。その後、借用書に懸賞金がつくわ。
ビルは"何か買ってきて、お返ししてもいいですか?"と言った。
ライトを見たときは混乱しましたが、ビルを見たときにはすべてが解決した。
彼らは僕とクロエが誰なのか知らなかったと思う。僕たちは彼のバックアップだった。
それから、ぼくらは奇跡的に撮影していた場所に戻って来れたんだ。
みんな、今までのことはなかったことにしようとしてるようだった。
プロデューサーは激怒してたわよ。
それがビルって人なんだよ。
撮影中にもかかわらず、ビルは演技をやめて、ぜんぜん知らない人の家へ入って行っちゃう。30分後にはクッキーを抱えて出て来たよ。「なにやってんだよ!」って言えば、
「あ〜、その家に行ってた。」
「その家の人はどう応対したんだい?」
「うん、家の人は朝食を食べてたところで、『あっ!ビル・マレーだ!』って言われたよ。
ホラ見て!家の人がこのクッキーをくれたんだ。撮影隊のみんなへ、って。」
彼はコントロール出来ないね。だから僕は彼をコントロールしようとは思わないよ。それがビル・マレーなのさ。
ジム・ジャームッシュ監督の印象
誰もが彼と一緒に仕事をしようとする理由は、自分の信念に基づいて忠実に何かを創作できるという一例であるからだ。
何を妥協して、何を妥協しないで作るかを知ることができる。
何が最も本物で、何が真実か、
彼の仕事のやり方は、決して妥協しないんだ。
しかし同時に、彼はとても謙虚な人でもあるんだ。
彼がパターソン(2016年の映画)でいつも言ってたのは、
「僕の映画をたくさんの人が観に来てくれるわけだから、ちゃんとしたものを作らなくてはならないよね。」