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ブロードウェイ”Burn This” 歴史的考察

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Vogue, May 2019

ブロードウェイの舞台で演じられた"Burn This"は、役者やスタッフを変えて計3回上演されている。 3回ともあらすじは大体同じ。

主演のペイルとアンナは、それぞれパートナーがいるにも関わらず、惹かれあっていくという古典的な三角関係の構造を持った恋愛物語である。

この2人を引き合わせたきっかけが、アンナのルームメイト、ロビーの事故死だった。

興味深いのは、ロビーの事故死についての表現が3回の上演ごとに少し違っているという点である。

それについて触れたVOGUEの記事を引用しながら解説してみたい。

以下、「」かっこの中はVOGUEより引用

1度目は1987年で、「ロビーの死については当時のAIDS危機に対する間接的な表現」とされることである。

ロビーはゲイのダンサーというキャラクターである。

ロビーの突然の死は、疫病の急速な蔓延を反映しているらしい。


Check
AIDSは1980年ごろから確認され、1981年、1982年…と年を経るごとに人から人への感染が広がり、ついに1987年に保健社会福祉省(HHS)は、HIVを「公衆衛生上重要な伝染病」のリストに含め、ウイルス陽性の検査を受けた人からの移民や短期間の海外訪問を拒否しました。
この頃ですでにアメリカの感染者数がアフリカ、ヨーロッパをはるかに超えるダントツの人数に達していました。

2度目の上演は2002年で、「不可解な死の影響に対処しようともがくニューヨーカーたちの物語は、9月11日に対する批評のように思えた。」

不可解な死…おそらくロビーの死のことだと思うが、舞台が上演された前年の同時多発テロ事件の影響と関連させ、1987年の時とは違った表現がなされていた。

最新の2019年に"Burn This"公演を演じたケリー・ラッセルは、「この新作を、現在の社会的、政治的な状況を超越した、世界の騒乱からの脱却のようなものだと考えています。『この作品には、政治的なものではなく、とても人間的なものです。』とケリーは話しています。」

ここまでをざっくり表に表すとこうなる↓

公演年 主演 演出
1987 ジョン・マルコヴィッチ AIDS危機
2002 エドノートン 9.11テロ事件
2019 アダム・ドライバー 人間ドラマ

時代によって、ロビーの死から関連させた舞台の演出・表現が変わってきている。それぞれの舞台において、それがどんな世相だったかが伺えるのが大変興味深い。

アダムの演じたペイルは、「コミカルなカオスから暴力的な脅威、威勢の良さから麻痺したような繊細さまで、様々な表情を見せることができます。」とあるように、怖さから繊細さまで、大きな振り幅を持った演技を見ることが出来たようだ。

「しかし、この作品は不在と不確実性をテーマにしています。」

アダムはこの舞台に対して以下のように言及している。

「80年代には人々が死んでいき、誰もその答えを知らなかった。説明のない喪失感は恐ろしいものです。この芝居は、それをうまく表現しています。演劇をやるということは、そういうことなのです。」

アダムがこの舞台を演じたのは2019年の夏。

その後、「人々が死んでいき、誰もその答えを知らなかった」世界になってしまうとは思いもしなかったろう。

コロナ禍の不在、不確実性の現在は"Burn This"が何度も繰り返し上演されたように人間が立ち向かっていかなければならない運命のようなものかもしれない。

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